|
|
ホウ素,ホウフッ化物などの高濃度廃液を処理する |
|
ホウ素,ホウフッ化物などの高濃度廃液を処理する
|
| 1.はじめに |
| ホウ素やホウフッ化物等を含む高濃度廃液の処理は非常に難しく,現状では安価で安定的な処理方法は確立されていない。そこで,独立行政法人産業技術総合研究所が開発した高濃度廃液処理技術の技術移転を受け,当社は各種高濃度廃液を安価で安定的に処理できるカプセルゲル法を開発したので本紙にて紹介する。 |
| 2.カプセルゲル法とは |
| カプセルゲル法とは廃液中の有害物質等をカプセル化する処理方法の総称であり,生成するカプセルによってビーズカプセル法とマイクロカプセル法の2種類に区別している。ビーズカプセル法ではH2剤を使用し,マイクロカプセル法ではH1剤を廃液処理に用いるが,H1剤,H2剤とも多糖類を有効成分とした2次汚染の心配がない環境に優しい廃液処理剤である。廃液をカプセル化することにより,これまで濃縮処理を困難にしていた,乾燥残渣が乾燥機の伝熱面に固着したり,完全に乾燥できずにペースト状になったりすることなく,固形分を回収することができる。 また,カプセルゲル法は凝集沈殿等の処理方法とは違い、廃液中の有害物質を含む全てのイオンをカプセル化し,それを凝縮乾固させる処理方法であり,処理水は凝縮水のみとなり有害な物質は含まれていない。 カプセル化の模式図をホウフッ酸廃液の例で図-@に示す。 |
今回はマイクロカプセル法を用いたホウ素やホウフッ化物等の高濃度廃液処理について解説する。 |
| 3.マイクロカプセル法とは |
| 3.1 概 要 マイクロカプセル法とは,廃液にカプセルゲルH1剤を添加して廃液にチクソトロピー性を付与させた後, ドラムドライヤー等の乾燥機で乾燥させる。これによって,廃液中のホウ素等の有害物質カプセルがシー ト状となり,ドラムに固着することなく乾燥させる。しかも、従来の乾燥法のように絶乾状態まで乾燥す る必要がなく,含水率を50%以下の範囲で任意の含水率にして回収することが可能となる。また,処理水 は凝縮水であるため,ホウ素等の有害物質は含有していない。 3.2 特 長 マイクロカプセル法の特長を下記に示す。 @乾燥残渣を含水率50%以下の任意の含水率で回収できる A高い含水率で回収すると粉塵が発生しない B高い含水率で回収すると大気から湿気を吸湿しない C高い含水率で回収すると乾燥に必要なエネルギーが低減できる D乾燥機に使用する蒸気圧力は0.2〜0.3MPaで良い |
| 4.比 較 |
| 4.1 従来処理法 廃液をドラムドライヤー等で乾燥させた場合,廃液中の有害イオン等は結晶状態まで乾燥させなければ回収できない。その結果,残渣の含水率は5%前後まで乾燥され多大なエネルギーを必要としたり大型の乾燥機を必要としたり,粉塵の発生によりバグフィルターを必要とする。また,大気中の湿気を平衡含水率まで吸湿して再泥化するため,廃液を蒸発乾固させる処理方法は安価で安定的な処理方法とは言えない。 4.2 マイクロカプセル法 マイクロカプセル法では廃液中の有害イオンをマイクロカプセル化させるため,有害イオンの結晶を成長させない。その結果,乾燥機の運転条件を変えることで残渣の含水率を 50%以下の範囲で自由にコントロールできるため,エネルギーの低減と乾燥機の小型化が可能となる。また,含水率を平衡含水率で回収すると,粉塵の発生はなく大気からの吸湿も少なく再泥化しない。 |
| 4.3 比較写真 廃液とマイクロカプセルを熱風乾燥機(110℃で2時間乾燥)で乾燥させた後,30分間デシケーターで放冷した状態を比較した。 廃液を蒸発乾固した状態を写真-@,走査電子顕微鏡写真を写真-Aに示し,マイクロカプセルを蒸発乾固した状態を写真-Bに示し,走査電子顕微鏡写真を写真-Cに示す。写真-@と写真-Aに示した通り,廃液を蒸発乾固させた場合は,結晶がシャーレに固着し,走査電子顕微鏡写真でも結晶を確認することができた。しかし,写真-Bのマイクロカプセルはシート状に剥離し,走査電子顕微鏡写真でも結晶を確認することはできなかった。 |
|
| 4.4 乾燥効率 ドラムドライヤーを用いた乾燥実験の結果を表-1に示す。表-1に示した通り,廃液をカプセル化することによってドラムの回転数を約6.6倍速くしても乾燥残渣も回収することができた。このこと から,伝熱面からの蒸発水量は14.3kg/m2・hから34.5kg/m2・hまで上がり,乾燥機の処理能力は約2.4倍高くなった。また,残渣の含水率も40.0%で回収できたため,粉塵の発生はなく乾燥機のスクレイパー等の磨耗も低減できる。これらの結果から,マイクロカプセル法は廃液のみを乾固させるよりも乾燥効率を高くできると同時に,乾燥機の耐久性を向上させることが言える。 |
|
表−1
|
| 5.処理フロー |
| マイクロカプセル法の処理フローは複雑ではなく特殊な設備を必要としない。代表的な処理フローを下記に示す。 |
![]() マイクロカプセル法の代表的な処理フロー |
| 6.まとめ |
| 廃液処理に於ける従来処理法と比較したマイクロカプセル法の効果を下記に示す。
@マイクロカプセル法は廃液が変動しても,凝集沈殿法の様に凝集剤の添加量を増やす必要はなく, 上記に示した通り,マイクロカプセル法は従来の廃液処理で起こっている問題点を解決した次世代型の処理方法と言える。 |
| 7.おわりに |
今回はマイクロカプセル法によるホウ素やホウフッ化物等を含む高濃度廃液の処理について紹介したが,当社で開発したマイクロカプセル法やビーズカプセル法による高濃度廃液の処理技術は、めっき工場やプリント基板工場から排出される高濃度廃液や、各種の食品工場から排出される高濃度廃液にも適用可能である。また、当社ではナノカプセル法や難除去性有害物質の凝集除去剤等の研究開発を行っているので,次の機会にこれらの技術を紹介したい。 (湯川 恭啓) |